2022/1/15-16 第20回東海ブロック雪崩事故を防ぐための講習会

【山行情報】
山域:長野県
場所:栂池高原
天候:1/15 晴れと曇り 1/16 晴れ
参加者:
受講生 3名(くらら)他の10名(東三河山ぽ会・若駒山岳会・名古屋同志会・浜松労山・みのハイク)
講師 4名 (東三河山ぽ会・名古屋ASC・あつた・岐阜ケルン)
事務局(県連理事長)

【行程】
(1/15 )栂池高原(鷲の家)集合7:30/9:10⇒早大小屋-鵯峰 実技講習会場10:00/15:10⇒鷲の家15:50
(1/16 ) 鷲の家7:50⇒第二駐車場集合9:15⇒栂池高原・実技講習会場⇒第二駐車場解散13:50

【目的】
雪崩に遭わないようにすることが最も大事で、リスクマネジメントを理解して、山岳遭難事故を無くすことです

【特記】
1.雪崩事故における死因の70%は窒息で、15分で掘り出されば、生存率は90%になります。もし雪崩に遭遇したら、要救助者はビーコンを送信し、救助者はビーコンのサーチモードで捜索します、ビーコンの有りが早い発見につながります。ビーコン捜索のトレーニングが絶対必要ですし、レスキューのトレーニングする時、ザックを背負って開始(スキーの人はスキーで)してください。
(ココヘリは雪の埋没の発見には不向きです)

2.雪崩発生の危険性が高まる気象条件
・急激かつ短時間での降雪(積雪の増加)
・降雪前の気温の日変化(最高気温と最低気温の差)が大きい
・急激な気温低下(積雪安定化が進まない)
・強風(吹き溜まりが形成しやすい)
・強い日射や降雨による積雪層の温度上昇
 日本雪崩ネットワーク https://nadare.jp/ 
 過去2週間分の天気図はHBC専門天気図https://www.hbc.co.jp/tecweather/    

3.リスクのある地形
・斜面の傾斜で35°~45°は一番雪崩が起きやすく全体の80%を占める
 国土地理院 傾斜量区分図 https://maps.gsi.go.jp/
・植生がない滑らかな開けた斜面は、雪崩の発生区になりやすい
 (樹木間の距離が<5m)栂池高原に雪崩の跡があります
・凸状地形(ノール地形)では、積雪にストレスがかかっている    
・地形の罠は雪崩で流された場合、狭い谷は深刻な外傷を負う可能性が有り、深い埋没になりやすいし、雪崩のデブリがたまる

【1/15講習会内容】
1.鷲の家でオリエンテーション後、ビーコンの装着方法
2.ゴンドラで栂の森駅まで上がり、ビーコンチェック 
3.講習地(早大小屋-鵯峰と1930Pのコルの間)に行く途中、ストックテスト、積雪状況、雪崩跡、植生を観察
4.ピット堀り、断面観察、雪面の傾斜、雪温の測定①シャベルコンプレッションテストCT、②エクステンデッドコラムテスト③シャベルチルト(傾斜)テスト④ルーペでの結晶観察 ⑤ビーコンの基礎練習(エアーポートアプローチを含む)

【1/16講習会内容】
1.講習地(栂池高原スキー場第2駐車場付近の森林帯)に移動
2.ビーコンチェック後プローブ操作とシャベルでの掘り出し救助等
3.複数埋没者をエアーポートアプローチでのビーコン捜索、谷側からのプロービングヒット操作と谷側からの掘り出し作業

1/15 鷲の家で講習会のオリエンテーション

【状況】
ストックテストは講習地に行く途中、雪が降った後、雪質が変化するのでストックを逆さに刺して、テストする。

スタッフが雪面傾斜計で雪面の角度を測定、この測定具はスグレモノです

木から5m以上離れた場所、雪崩の危険がない安全な場所で、雪面の傾斜角を測定、30°~45°は一番雪崩が起きやすい

講師手づくり雪面角度計(労作です)と弱層テストの危険度評価を右側に書いてあります

雪温測定のため、ピットを掘ります、雪面から20cmで-11.5°

講師が雪温計(デジタル表示)で雪温を上から5cm刻みで測定しています、直射日光の影響を避けるため、日陰で温度測定

弱層テストの方法と手順
テストによる刺激が真上から伝達することから比較的正確な危険度評価ができますが、スノーソー(30cmの目盛付)やシャベルは必要です
左側はスノーソーを下まで入れて、煙突状に雪を取り除く、右側はスノーソーでくさび状に雪を取り除き、最後に背面はスノーソーで切れ目を入れて、30cm角の雪柱を作る。
右面、前面、左面をシャベルで滑らかにするのが肝です。この後3班に分かれ、シャベルコンプレッションテストをしました

シャベルコンプレッションテストの30cm四方の四角柱
シャベルコンプレッションテストを始めます

切り出した幅30cmの四角柱の前面と側面の状況を観察しながら、シャベルのブレード(ブレードは下向き)を叩く
弱層があるかどうかが分かる。今回の結果は安定していました。

叩く回数
(各10回)
結  果積雪の状態と行動判断
なし四角柱を切り出している
最中に崩落した
非常に危険・中止
1~10回手首を使い、手のひらで
11~20回叩くと破壊した
不安定
行動変更・中止
11~20回肘から先を使い、拳で
叩くと破壊した
吹き溜まり・急傾斜地
は危険
21~30回腕全体を使い、拳で
叩くと破壊した
概ね安定
注意して行動
上記の手段で四角柱が
崩れなかった
安定
行動・滑走可能
シャベルコンプレッションテストの判定
エクステンデッドコラムテストECTは幅90cmで、奥行きの背面は2人でワイヤーを下して切断したいます
講師が3種類の方法でシャベルのブレードを叩き、結果は安定ですが、過去3日間で100cmの積雪がありました

切り出した幅90cmx奥行30cmの前面と側面の状況を確認し、テスト方法はシャベルコンプレッションテストと同じ

積雪の硬さをフィンガーで測定(簡易測定)、右側の線は硬さが異なる層につける、ハンドテストで積雪の硬さが異なるところがアブナイです、ECTでのテストで横に27cmの亀裂が入りました

今回はF、4F、1Fで硬さを測定しました

標記ハンドテスト用 語Term
F手袋をはめた拳が入る非常に柔らかいFist
4F手袋をはめた指4本が入る柔らかい4Fingers
1F手袋をはめた指1本が入る普通1Fingers
硬さテストの判定

この日、最後にビーコン捜索の基礎練習を行いました

ビーコンのエアーポートアプローチ

シグナルサーチの時ビーコンの矢印表示に従って、スキー又わかんでスムーズに移動し、コースサーチ10mになったら10と廻りに大きな声で宣言する(ビープ音の変化)立ち止まる(ビーコンの反応は1秒かかります)少し速度を落とし(ビーコンは胸の前)ファインサーチの3.0mで立ち止まる。方向が固定されるので、膝の位置までビーコンを下げ、前に出す。(肝はビーコンの高さは一定であること)
ゆっくり歩き「2.5→2.0→1.3→1.0」声を出す、例えば、前進で1.2になったら1.0まで戻り、右に一歩移動し1.2なったら、1.0に戻り、左に行き1.3になったら戻り、1.0の位置で下げて、数値が下がる時、その場所が捜索位置となる
ビーコン捜索で最小値まで行き、プローブで刺しましたが、私は5回刺してもヒットしなかったので、講師がOUTと宣言しました。
本日の講習会は終了し、ゴンドラの栂の森駅(1,574m)に移動、講師 4人とくららのMさんはスキーで鷲の家(約800m)までスキー滑走、他の人はゴンドラで戻りました。
時間は約20分かかりますが、スキーもゴンドラもほぼ同時で、
鷲の家には15:50に到着でした。

1/16 9:00 栂池高原スキー場第2駐車場

1/16 は講習地(栂池高原スキー場第2駐車場付近の森林帯)に移動、講習はゾンデ棒の取り扱いで、ゾンデ棒(プローブ)は人のいない下流斜面に展開しロックする(しないと雪面から抜くとき外れます)150cmの位置に印をつけ、地上に出ているのが、90cmとすると最低でも240cmは必要です。たたむときは末端から折りたたむ(ショックコードが一番長い)。使わないときは、流されないように雪面にゾンデ棒を刺し、捜索の時は雪面に対して垂直に刺す(これが肝です)。
シャベルで掘る時は、下流側からゾンデ棒に対しU字の方が早く人を引き出すことができる、雪はコンベアー方式で下に排出する
シャベルは最初は長く、埋没者が見えたら短くできる調整が必要です。
シャベル作業は疲れるので、疲れる前に右回りで交代する。

雪崩読本(編者:氷雪災害調査チーム&雪崩事故防止研究会)山と溪谷社に詳しく書いてあります。


ビーコンによる捜索活動のトレーニング

受講生のエアーポートアプローチと講師による動作確認
シャベル (ブレードの穴に小さなカラビナを取付て、細引きΦ3mmを接続して柄に付ける)をたすき掛けで救助に向かう
B班の2個のビーコン捜索と掘り出し作業


2個の宝さがしをビーコンで行い、1個目を捜索したらマーキングし、2個目を捜索する(複数の埋没者の発見)
班毎にビーコン捜索、プローブヒットし、深さも数値化できます、シャベルでの掘り出しを15分以内に2個実施です。いざというときに物事を俯瞰でき、先読みできる指揮官が一番大事で、ビーコン操作、ゾンデ棒を組み立て渡す人、シャベル作業と掘り出し、すべての作業は声掛けと連係プレイが必要と実践でつくづく実感しました
AとB班両方とも15分以内に掘り出しました、受講生の反省と講師の講評で13:50終了しました。

リスクマネジメントはハーザードを評価し、曝露を避け、脆弱性を補う装備・体力・レスキュー技術を身につけることが必要となります

【参考】
・やまどうぐレンタル屋で(ビーコン)マムートエレメントバリーボックス(2泊3日)合計5,000円(往復の送料込み)

・第20回東海ブロック雪崩事故を防ぐための講習会費は18,000円
内訳:講習会の費用、鷲の家1泊2食と往復のゴンドラ費用