状況
霞沢岳から穂高がみたい!ということで自主山行を企画。夏は上高地から水を担いで徳本峠経由でピストン、となるが、それは大変だろうということで、水をいくらでも確保できる残雪期をターゲットにした。
23日夜に名古屋市営地下鉄本郷駅発。中津川ICで降りて藪原経由で沢渡駐車場にて仮眠。沢渡駐車場はトイレに暖房が付いているので快適。
ヤマテンの予報では24日は風もなく天候は晴れ。夜は吹雪く、25日は稜線は強風。ということで可能なら24日中に山頂アタックすることも可能性に入れつつ出発。
上高地トンネルを出てすぐ右の「国土交通省松本砂防工事事務所」の看板を見たら右に入る。ここでアイゼン・ピッケル装着。3分程歩いて左の稜線の上に鉄塔が見えたらそこが取り付き。いきなりの急登がテント泊装備には堪える。
最初のウェルカム急登を終えるとこの景色。穂高が美しい。上高地散策の方も、これだけを見に登っても良いかもしれない。
西尾根は基本的に急登が続き、序盤は雪の下には笹、中盤からは氷が潜んでいるので非常に神経をすり減らす。石突きでは不安なのでピックを刺して登る。何度も倒木をくぐることになるがこれも重装備に厳しい。

滑落が致命的な箇所がいくつもある。ゆっくり歩き、何度も休憩をはさみつつ、1900mぐらいの幕営地にテントを設営。ちょっと狭いが、これ以上テント泊装備で登るのはしんどいし危ないという判断だ。
時間・道のコンディションの良さから、今日中に山頂を目指すことにする。宿泊装備は置き、ハーネスを身に着け、身軽になって出発(ビバーク装備はもちろん持っていく)。
そしてこの先も急登。しかも手掛かりになるような立ち木も少なかったりでダガーポジションの連続。また下部にクラックができている急な雪の斜面を何度もトラバース。トラバースは崩壊・雪崩の危険も考慮してメンバー間で広めに距離を取った(が、後から考えるともっと安全側に倒してトラバース地点は一人ずつ渡るべきだったと反省)。
やがて白山・乗鞍岳がはっきり見えるぐらいから、気温もあがり雪が少しずつ緩み始める。2500m地点の岩場は、登りは確保無しでもなんとかなる。問題は下り。
ここを過ぎてから少し行くとなだらかな稜線歩き。雪庇・シュカブラを楽しむ、と言いたいところだが、やはり前半のテント泊装備での急登が響いており、きつい。このあたりから冷たい風が吹いてくる。14時過ぎ山頂到着。思わずガッツポーズ。雪を纏った穂高は神々しい。のんびりしたいが雪が緩む前に下山しなくては。風も少し強くなってきた。
2500m地点の岩場の下りが核心。ここも落ちたら致命的だろう。残置のスリング類が不安だったため負荷のかかる懸垂下降は止め、残置のスリングに捨てカラビナを付け、ロープを垂らしフリクションノットで確保しつつクライミングダウン。ここはロープなしでも行けると言えば行けるだろうが、ロープを使う手間や時間と、滑落可能性とその時のダメージとを比較して判断すると良い。

核心を降りて一安心、といきたいところだが、この後も下山のトラバースで谷側の足を何度も踏み抜きそうになり、緊張する箇所が幾つもあった。心身疲れ切らないようペースを守り休憩を入れつつ、最後の急坂を下り、やっとテント着。
ほっとする。雪を溶かして具沢山のラーメン。
夜中はたまに吹雪いたり強風が吹いたり。ヤマテンの天気予報通り。
翌日の下山は、登りで怖かった箇所をテント装備で下ることになるので雪が緩む前に出発。一か所ロープを出しランニングビレイを取りつつ下る。樹林の間から望む穂高の稜線は、強風を示す雪煙。昨日登っておいてよかったなぁ。
思ったよりも難しくきついルートだったが、無事下山し、達成感に浸る。
帰りは坂巻温泉にて入浴。日帰り入浴600円。露天風呂はあるが内湯と別れており、露天風呂は洗い場なし・少なくとも男性風呂は駐車場から色々と丸見えなので、覚悟が必要。建物内は秘湯らしく、実に味わいのある木の質感。良いお湯だった。個人的には、何度も上高地に来ながら入ったことがないお風呂だったので、感慨がある。
感想
- ネットでは「冬季バリエーションルートの入門」と書かれていたが、想像以上の技術・体力・判断力が求められるルートだった。
- 幕営箇所の下が雪庇でないかプローブで確認したり、ビーコンでの探索の練習、積雪の観察、コンプレッションテストなど行い、勉強になった。
- 知識・経験・技術・体力の総合力が求められる山行で充実した。
- テント泊装備で上まで行くのはきついので、日帰りか、テントを張れそうな箇所で早めにテント設営するのが良さそう。