2015年度 藤原岳に於けるハルザキヤマガラシの活動報告【ハルザキヤマガラシをこれ以上増やさない為には?】

1 ハルザキヤマガラシ

ヨーロッパに自生する二年生植物で、北アフリカ、オセアニア、北アメリカ、アジア(日本を含む)で雑草として帰化している。草丈は20~90cm。羽状に切れ込みのある葉は艶のある緑色で、茎の周りにロゼット型につく。黄色い花は、密度の濃い集合体となって5月から10月頃に葉の先に咲く。現在、日本の侵略的外来種ワースト100、外来生物法で要注意外来生物に指定されている。

2 藤原岳の現状

ヨーロッパの寒冷地を原産であるハルザキヤマガラシが、気候が似ている藤原岳の頂上付近の広範囲に自生してしまい、本来の固有希少植物の生育を妨げている。ハルザキヤマガラシは裸地に根付く習性があり、近年の鹿の食圧により様々な植物(特に固有希少植物)が食い尽くされ裸地になった場所にハルザキヤマガラシが根付くという悪循環が起きている。現在春先になると頂上の北側が真っ黄色に染まるという、今までの藤原岳では見られなかった異常事態となっている。

3 愛知県連としてどう対処してきたか?

一昨年、愛知県連にこれ以上この悪循環を放置すれば、『花の百名山』の1つに数えられる藤原岳から、早晩希少種を含む多くの固有種が消えてしまうという危機感を抱いた、藤原岳自然科学館や地元の自然保護団体より駆除に関する依頼要請があった。この依頼を検討した結果、愛知県連としても自然保護憲章に基づく自然保護の観点から、これ以上の拡散を食い止める必要があると考え、昨年春の清掃登山の機会に集中的な駆除作業を行った。

4 本年度の活動

本年度は、昨年の活動をベースとして自然保護部会が中心となり、5月の各会合同駆除など以下の活動を定期的に行い、分布調査、駆除方法の研究や立案を行った。

日時 参加人数 目的
3/22 3名 ハルザキヤマガラシの生息及び分布に関する調査
4/4 3名 藤原岳自然科学館と駆除方法に関するミーティング
4/5 1名 藤原岳自然を守る会と協力方法に関するミーティング
4/25 10名 ハルザキヤマガラシ駆除及び駆除方法の研究
5/24 73名 各会合同ハルザキヤマガラシ駆除
6/14 7名 ハルザキヤマガラシ駆除
10/25 5名 夏季ハルザキヤマガラシ駆除の結果検証
11/1 3名 ハルザキヤマガラシ調査
12/4 2名 ハルザキヤマガラシの越冬に関する調査

5 今年度の活動から見えてきた事及び反省

本年度の活動を通じ、以下の活動の意義や効果が具体的に確認できた。
*藤原岳に於けるハルザキヤマガラシの根絶は不可能であるが、現在の活動を継続する事により、これ以上の拡散を食い止める事は可能である。
*各会合同による、多数参加での駆除が効果的である事が確認できた。一方、登山道以外での活動の多いので、多くの人がそのエリアに侵入する事による他の希少植物へのダメージをより注意すべきと感じた。
*駆除した草を担いで下す事は、一部の参加者にとっては非常に危険である。今年実施した山頂での自然腐敗の処理を基本線にすべきと考える。
*活動を開始する前に地元の団体と協議する事により、駆除の方法・エリアを決める事ができ、スムーズな   スタートが切れた。一方、7月以降夏場から秋にかけて駆除活動の担当が決まらず、停滞してしまった。
*駆除方法の統一により、効果的且つ安全な活動が出来る事が確認できた。

6 来年度への提言

前述した通り、完全な駆除は無理としてもこの活動を継続する事により、これ以上の拡散・悪化を抑える事は可能である。本年度の活動が概ね良い結果を得られたことを鑑み、来年度以降も長期間に渡ってこの活動を継続すべきであろう。その際には、県連内の月担当を早い段階に確定し、各会の負担の平準化を検討すべきと考える。
この活動の意義や有効性を一般の人や地域にアピールする事が急務と考える。そのためには藤原岳自然科学館を中心とした、他団体との統一的な活動は不可欠であろう。来年度の早い段階で他団体への声掛けを行い、協議を通じて駆除するエリアやその方法、駆除後の処理方法などの画一化を図るべきと考える。

以上

自然保護部